こうふく

ぼくの腕は半分 映る水にさしいれてある

心象という湿潤のなかで

月のようにやわらかな母体を見うしなって

あらわれては消える詩人たちのお墓

言うことが

できなくなっていく

雨期のように

つめたい、台所で

噛みくだいた、あまい梨とかあまい、巨峰は

樋をつたう 遮る水が演じる えいえんに

ゆれる草花にアクセスして

ぼくというぼくが

簡略化されていくのがきもちよかった

(どこに到達しようと

これはけっして

見る夢のなかではないのに)

ねつれつに

散らばるひかりの視線を感じる

さしいれた腕がぼくの

映る水をわずかに動揺させて

えがく

という行為のさなか

風景という風景が どこまでも

遠のいていく