学校 

 

きのうの雨すごかったね

うん、

自転車に乗ってたからぬれちゃった

大変だったね

大変だったよ

風邪ひかなかった?

うん、大丈夫だったよ

 

今日はじめじめするね

じめじめ?

じめじめっていうのは、湿気が多くて、肌がべとべとすること

べとべと?笑 ふーん

 

自転車に乗ってどこへ行ったの?

川とかコンビニへ行った、おばあちゃんと喧嘩したの

そうなんだ

この国の夜は誰もいないね

どういうこと?

わたしの国は夜も町や公園に誰かいたの

楽しそうだね

楽しかったよ

 

学校終わったら一緒にあそぼう

ごめんね、今日は駄目なんだ

そっかー、残念

ごめんね

 

国にいたときは学校が終わると海へ行ってたの

海!いいな!

ひとつの自転車に5人乗って

え!?

わたしが運転して、後の座るところに板を置いて、板にこうやって4人座るの

へー楽しそう

楽しかったよ

今度一緒に行こうね

 

空高く蹴りあげられるボールの音がする、ぽーんぽーんと、規則的に

それから女の子たちが飲むピーチティーの香り

 

100年もの時が過ぎたような気がする

それでいて、その隙間は白くてのっぺらしてて

 

お金を貯めて、ともだちの国へ行きたい

会えるかどうかはわからないけど

 

密告


これはなんだろう


つきうごかされてようやっとうごいている先端 というかんじ


蝿につきまとわれて


蝿をおいはらうしぐさをゆめの中でもくりかえしている
右手をひらひらさせて 関節を鳴らす、プール している
それは、死んでしまった野鳩の目目のようであるが 食器と食器のぶつかりあう音とはほど遠く まひるの浴室にひってきする静けさをたえまなく滴らせている、くぐもらせている 、から、だから とてもよかった
とても しろい貝の
臓物)とでもいうのだろうか
ひかりに透ける襞を反芻して、そして、長いあいだ密閉されていたため 窓をあけた瞬間 以外のものはみなふき飛ばされてしまった
水にまつわる名前の広場で
いたずらに耳をすまして
ひとかたまりになった感覚たちは
夢やうつつのなかへ投げ落とされる、器
動物の骨でできた器、そのように生きることを強く希望していた
記憶
とおいとおいむかし
遭遇した
赤ちゃんや、友人や、モニュメントなどは今
どこで どうしているのだろう


どうしているのだろう、考える
ここにアーカイブされている文書の、せつないほどひろい平原に浮かぶ、あの、遊覧船のような雲は透きとおる、習慣である、確実に流れていく存在、であるから
滞留している
また そのような場所の


とても長い廊下に佇んでいる
等間隔にならんだ窓はすべて開けはなたれていて、流れこんでくる
もの たちはしなやかな未成熟の月であったし、水際のカーテンでもあった
だから、今が夜であり あれからとてもながい月日が経過したのだと、気づくことができた
気づく ことができて
ここにいるような気がしない
それでいて確実にここにいる
わたしは いつもひとに優しくすることができなかった いつも
月のひかりで明るい
窓の外には、誰もいないなだらかな丘が続いている
性的な夢のように なんの脈絡もなく
始まりがあって、そしてとうとつに終わる
やわらかな、しろい、次の場所、になりながら
とうとつに 終わる。


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2016年(多分)に石川史夫さん主催の賞に投稿した詩を少しいじったものです。

 

 

こうふく

ぼくの腕は半分 映る水にさしいれてある

心象という湿潤のなかで

月のようにやわらかな母体を見うしなって

あらわれては消える詩人たちのお墓

言うことが

できなくなっていく

雨期のように

つめたい、台所で

噛みくだいた、あまい梨とかあまい、巨峰は

樋をつたう 遮る水が演じる えいえんに

ゆれる草花にアクセスして

ぼくというぼくが

簡略化されていくのがきもちよかった

(どこに到達しようと

これはけっして

見る夢のなかではないのに)

ねつれつに

散らばるひかりの視線を感じる

さしいれた腕がぼくの

映る水をわずかに動揺させて

えがく

という行為のさなか

風景という風景が どこまでも

遠のいていく

minus

そうげんに建てた、しろい建造物の、風にはためく繊毛に、眩しさのあまり暗い、まなざしはからめとられ、規則ただしく、満ちる、けれど、喋らないでいる、全体が、らせんをえがくように、とうめいの、層になって、うちがわから、消える、わたしは、模写していた、日記帳のさざめきから、夜の、台所のさざめきまで、すべて、網羅しておきたい、どこまでも、羽ばたくそぶりで、題名をあたえ、風をすく、草花には、柩がないから、あいすることができない

それから、ポケットのなかの、貝がらとか、お家のような、しろい化石から、猫をつれて、そうげんへアクセスする、分かれることなく、ひとつしかない道は、打ち捨てられた日傘のしたの、蟻の葬列、それは、きらきらとたちのぼる、あまい、梨の匂いにも似た、あまい逃げ水の、その向こうにあるそうげんへ、つづいている

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2015年に書いたものに少しだけ手をくわえた。